■あらすじ■


祖母の家に帰郷するのは実に8年ぶりだった。
今回の帰郷はただの思いつき。
ただ、都会の雰囲気が少しだけ嫌になったから。
……というのはまあ、建前なわけで。

医者に言われたのは「静養」。
ふざけるな。
こちとら大学生活が一生懸命なんだぞ。
9月病なんて聞いたことない。
そんなことを思っていた。

しかしそれも病院の玄関を出るまで。
自分の状態を聞いて安心したのか、それともただ病気のせいなのか。
僕はあろうことか病院の玄関でへたり込んでしまったのだ。
自分のその精神的弱さを認めざるを得なかった。

僕は疲れたのだ、日常に。

そりゃあ、そうだ。
親には言ってないが、本当は大学を辞めるかどうかの瀬戸際まで来ているのだから。

そうして僕は、北へ向かうことになった。
…その手にたくさんの薬を持って。